今日山田先生から「痛みと臨床」という論文が送られてきた。
山田先生は、私が属する松島病院グループの一員で、横浜のランドマークタワー内の松島ランドマーククリニックで、「こころとからだのいたみ外来」をおこなっている。
専門は麻酔科であるが、精神的ケアや東洋医学的手法も使って、患者さんの心と身体を癒している。
僕も患者さんの痛みの多くは「心の痛み」だと気付き、患者さんにその意味を教え、対処法をともに考えようとしている。
彼の論文が送られてきたわけは、山田先生たちがおこなっている「こころとからだの痛み研究会」で来年私が講演をするからである。
この研究会の代表は、浜松医大の永田勝太郎先生で、だいぶ前に彼の「新しい医療とは何か」という本を読み感銘を受けて以来、一度会いたいと思っていた。
会えるのが今から楽しみである。
夕方、「クリニックマガジン」の編集者と会う。
この雑誌の8月号のグラビアに私の写真が使われたからである。
写真の返却のついでにその雑誌を持ってきてくれたのである。
その雑誌に小泉改革のことが載っていた。
医療の分野の改革も急速に進みそうである。
ただでさえ、冬の時代といわれている病院経営は厳しくなっていくだろう。
気になるのは、この改革の骨子を作っているのが財務省で、医療の向かう方向性に対する論議がほとんどなされていないのに経済的な面から改革しようとしていることである。
これではますます本質から離れていく。
僕が考える医療の方向性について書いてみたい。
まず、「限りない延命」と言う究極のエゴを助長させ続ける今の医療システムを根本的に改める必要があると思う。
そして、輝いて生き、輝いて死んでいけるシステムの構築が大切となる。
それにはまず、治療よりも予防が大切である。これは経済効率からいっても当然である。
なるべく薬を使わず、自然治癒力を高める治療が大切で、西洋医学、東洋医学、代替医療を含めたホリスティク医学が重要な位置を占めてくるはずである。
さらに、輝いて死ぬ手助けのために、ホスピスや終末期医療の充実が大切となる。同時に生と死の教育が重要で、とくに子供のころより生と死について考える習慣が必要である。
さらに今遅れている精神医学の充実も望まれる。
とにかく個々の分野を進歩させ続けるのではなく、全人的医療に帰るべきだと思っている。
これらのことは人の幸せにつながる医学だし、経済効率の面からも優れているはずだ。
経済だけを見て改革したら、人の心は離れてしまう。
前に進む時に一番大切な事、それは「向かう方向性」を明示する事である。
そうすれば痛みは我慢できるはずだ。