映画「AI」を見た。
スピルバーグの映画はいつもそうだが、あまりにも込められたメッセージの多さに驚く。
スピルバーグの映画の全編を貫くテーマは「愛」である。
この「AI」は、子どもを失って悲嘆の感情に沈む妻に対し、夫がロボットを持ちかえることから始まる。
従来感情を持たないはずのロボットに愛の感情をインプットできるようにしたものである。
ロボットの少年は母に愛情を持つようになり、はじめは拒否していた妻もそのロボットを受け入れるようになる。その時、死んだ息子が生き返った。
そして、捨てられるロボットの少年。
彼は母の愛情が得たくて自分を人間に変えてくれるブルー・フェアリー(ピノキオを人間に変えた)を捜し求める。
やっとみつけたブルー・フェアリーは温暖化で沈んだマンハッタンの公園にあった人形。その前で「お願いです。人間にしてください」と繰り返す少年。その時、彼は海中に閉じ込められてしまう。
だが、彼は機能が停止するまで祈り続ける。
そして2000年後。
人類はすでに滅んでいるが、その時地球に生きる新たな種(以下新たな種)に助けられる少年。
少年は、「母さんは?」と聞くが、当然お母さんはとうの昔に死んでいない。
子どもを可愛そうに思った新たな種は、おかあさんの髪からお母さんを再生する。しかし、再生した人間は1日の命しかない。魂を失った生命体は決して元通りに戻らない(ここが大切)。
その1日、少年はお母さんと幸せな日を送る。
そして疲れて眠りにつく母。
少年とは永遠の別れである。
その時、新たな種は慈悲の心で少年の生命も終わらせた。
この映画では、愛以外に、環境問題、人間の欲望の醜さ(優れたものを排除する、肥大する性の欲望、いらないものは使い捨て)など次から次へと重いテーマをぶつけてくる。
そして、これらのテーマを直接的ではなく、比喩で表現するところが実にうまい。
これだけの深いテーマに気付く人は多くはないだろうが、気付く人にもそうでない人にも興味深く見せてしまうところがスピルバーグのすごさだと思う。
ここで気付いて欲しい。
永遠の生命は残酷である、ということを・・・。
生命が有限であるから、生命がそして愛が輝くのである。
ふと気付いた。
人間でもっとも辛いのは「愛するものとの別離」であるが、なぜそれが辛いのか。
それは愛をもっとも輝かせるために必要だからなのだ。