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サファリ日記 空撮編 9月1日

もう一度ナトロン湖に挑戦したい、と昨日アレックスに告げた。

アレックスは「フィルムをくれたら、行こうかな(彼も撮影するのだが、今回はフィルムを持ってくるのを忘れて、僕がフィルムをあげるたびにフィルムキスをしながら大喜びしている)」とおどけていたが、きっと行ってくれるだろう。

たとえ多少きびしい飛行であっても、彼も昨日の素晴らしいシーンをもう一度見たいはずだ。

彼自身「スペシャルだ」と言っていた位であるから・・・.

とくに朝の方が光は良いし、気流も安定している。

午前7時半出発。

一直線にナトロン湖に飛ぶ。

昨日見た風景が次々に現われてくる。

約30分でナトロン湖が見えてきた。

フラミンゴの撮影はほとんどせずに営巣地帯に急ぐ。

僕の後に家内とさくらさんを乗せたいから早く戻る必要がある。

実際、フラミンゴの数は昨日ほど多くない。

毎日、様子が違うからおもしろい。

飛行機は、水のないソーダのプレート地帯に入っていった。

いびつな円形や六角形のソーダプレートが連なり、プレート間は灰色で独特の模様を呈している。

プレートの色は昨日見たものは褐色だったが、今眼下に見えるのは黒色で美しい。

朝日をあびて光っている様はまるで宝石のようだ。

しだいに営巣地帯に近づいてきた。

先の方にピンクの無数の点が見えてきた。

巣はプレート間のつなぎ目の灰色をした部分に沿って作られているようだ。

その部分が軟らかく、その成分を積み上げて巣を造るのだろう。

眼下に数千のフラミンゴが見えてきた。

事前にアレックスには「巣に近づく必要はない」と言っておいたが、彼はだんだん近づいていく。

風向きのためか、低く飛んでもフラミンゴは逃げない。

まあ、彼の腕を信じよう。

飛行機は、尾翼を下げ、前を持ち上げながら、抵抗をつけながらの超低速飛行に入っていった。

どんどん高度を落としていく。

しかし、まったくフラミンゴは飛行機に気付かない。

巣の上には親鳥が一羽一羽乗っているのがよく見えるようになった。

おまけに親鳥が離れている巣には卵まで見える。

美しい。美しすぎる。

自然の驚異だ。

こんなシーンはもちろん初めて。

いくら低速とは言っても、ブレが怖くてなかなか望遠では撮影できない。

しかし、「撮影できてなくても満足」(通常はそういうことはない)と僕に思わせるほど素晴らしいシーンだった。

低速飛行で巣を見ながらの飛行は10分位だったろうか。

フラミンゴが飛行機に気付き始めたので、高度を上げ、引き返すことにした。

もうフィルムも残り少ない。

フラミンゴの撮影はやめにして戻ることになった。

帰りはグルマニ・エスケープメント(崖)に沿って戻った。

ここは1000m以上の急峻な崖が続いていて、景観がすばらしかった。

しかし、ナトロン湖が素晴らしすぎて、あとのすべてがかすんでしまう。

営巣地帯での飛行は高度の技術を要するもので、アレックスは撮影できなかったようだ。

「うまく撮れていたら、あとでスライドのコピーをくれ」とさかんに言っていた。

この後、家内はグルマニ・エスケープメントに沿って、さくらさんはここでの飛行は初めてなのでマガディ湖を飛ぶ。

それにしても、アレックス、ご苦労様。

今日は近くのマサイ部落の年に一度のお祭りの日。

キャンプの前を正装したマサイ族が歩いて、村に向かっている。

周辺のマサイ族が集結するらしい。

おもしろそうなので僕らも飛び入り参加することにする。

アレックスが参加の交渉をしてくれる。

アレックスはマサイ族と仲が良いのだ。

徒歩で約10分、歩いて村に行く。

途中で異臭に気付く。

何かと思うと、木の枝に死んだ蛇がぶら下がっていた。

その蛇はコブラで、昨晩、マサイ族の見回りの人(アレックスが頼んで、僕らのテントの周りを見回ってくれていたらしい)が殺したらしい。

テントから数十メートルの距離でちょっとびっくりしたが、もっと驚いたのはアレックスの言葉だった。

アレックスは「僕なら殺さないよ。コブラは決して攻撃的ではないから」と言う。

しかし、彼は一度コブラに噛まれている。

幸いにも運動靴のかかとの一番厚いところだったので、何もなかったが・・・。

その彼が「殺さない」という。

本当に共生を実践しているアレックスらしい言葉に感激した。

村に着いた後、正装したマサイ族が踊ったり、食事を作っている姿を撮影させてもらう。

よくツアーで行く観光マサイではなく、本当のお祭りだ。

しかし、暑くてまいってしまった。

空撮があるから早々に引き上げることにする。

午後は4時過ぎから飛行。

午後からは雲が多くよくない。

それは当然だろう。

朝にあんなにすごいのを見たのだから、しばらくは天候には恵まれないだろう。

こういった感は実によくあたるのだ。

だから、今日は早々に引き上げることにした。

こういう時は欲張らないことが肝心だ。

キャンプ最後の晩も何事もなく過ぎていった。