昨日外来に来た患者さんが一冊の本をプレゼントしてくれた。
彼女は僕の「生命」の表現活動を理解してくれているから、
この本を読むように薦めたのであろう。
主人公ジョン・ハーディングは、大きなコンピューター会社の最高経営責任者(CEO)。
野球選手の花形だった彼は、怪我でプロの道をあきらめ、やがて実業界に入り頭角を現し、若くしてその地位についた。
そして頂点にたった矢先に、最愛の奥さんと息子を交通事故で失う。
絶望した彼は死のうとする。
ピストルに手をかけたまさにその時、彼の親友が訪ねて来る。
友人はリトルリーグの監督を要請しにきたのだ。
断りきれずに監督に就任し、リトルリーグは開催される。
そのチームには、まともに捕球もできず、球を打つこともできない少年が一人いた。
その少年は、「毎日毎日自分が進歩していると信じている」と言う。
「僕は絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめない」と口にする。
しかし、少年が原因で初戦をおとす。
いつまでたっても1本のヒットも打てない。
それでも全力で取り組んで行く。
成果があがらなくても、必死に立ち向かう彼の姿に、主人公を含め皆が生きる勇気を教えられていく。
実は、少年は脳腫瘍でふらつきや複視(二重に見える)があったのだ。
そして、命が長くないことを自ら知っていた。
最後の決勝戦、少年ははじめて試合を見に来た母(貧しくて働かなければならないので試合を見にこれなった)の前ではじめてヒットを打ち、そのチームを優勝に導く。
最後の試合まで休まずに出場すること、そしてお母さんの前でヒットを打つことが少年の夢だった。
彼はその試合で「最後の輝き」を見せ、その後、倒れ寝たきりになる。
そして幼い命は召されていった。
少年のお母さんは、お墓に次のような碑文をのせた。
「ティモシー・ノーブル・・・・・・1991年4月7日没。
僕は絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめなかった」
主人公は、生きる勇気を少年から与えられ、CEOに復帰し、火事のために再建のめどがたっていなかった図書館を建てなおす。
そして、その名前が「ハーディング・ノーブル公立図書館」。
図書館の玄関の壁には2人の男の子の肖像画がかけられている。
少年は決して死んだのではない。
彼の生命は別のところで生きている。
現世でも別のところでも・・・・。
この世で「生きる」うえで大切なことは、長く生きることではなく、「最後まであきらめないで精一杯自分らしく行きぬくことだ」、と作者は言いたいはずだ。
僕とまったく同じ「生と死」の考え方だ。
しかし、人間は弱いもの・・・・。
なかなかこのようには生きられない。
僕は、失敗でくじけそうになったら、この本を開いて読みなおそうと思っている。
この本のタイトルは、「十二番目の天使」である。