写真家の緑川洋一さんが84歳で天寿をまっとうされた。
緑川さんは,僕が1996年に受賞した林忠彦賞の選考委員の一人だった。
岡山県在住で,岡山市には緑川洋一写真美術館がある。
山口県の徳山市(林忠彦の生家がある)での授賞式の帰りに新幹線で岡山までご一緒させていただき、いろいろな話をうかがった。
歯科を開業しながら撮影活動を続けたこと,金曜日の診療が終わってから夜行で撮影地に向い,月曜日の朝に家に戻って診療を開始したこと,常に自分で企画した本を出版していったこと,その本が70冊以上になったこと,初めての海外での撮影の様子,海外での写真集の出版までのいきさつ,緑川洋一写真美術館設立について,家族のこと,病気のことなどさまざまな話をうかがった。
その時すでに80才近くになられていたはずで,大病から回復されたばかりであった。
しかし,その温厚な語り口のなかに熱い情熱をひしひしと感じた。
「素敵な生き方だなあ。緑川さんを見習って頑張れねば」と思ったことをよく覚えている。
歯科医の後を継がれた息子さんが「親父,写真に専念してくれよ」と言って,家を継いでくれたとうれしそうに話をされていた。
やるべきことはみな済ませたので,召されていったのかもしれない。
ご冥福をお祈りする。
仲の良かった故・林忠彦,植田正治さんたちと天国で写真談義に花をさかせていることだろう。
僕が受賞して5年。
その間に選考委員のうち3人が亡くなられた。
僕自身にも大きな変化があった。
5年の月日の重みをつくづく感じている。