僕の写真を雑誌やパンフレットに使いたいという依頼が時々くる。
僕が撮影したというクレジットが入るのならだいたいOKするのだが、その値段は驚くほど安いことが多い。
1枚スライドを貸して、1万円なんてこともある。
あれだけ取材費がかかっているのに・・・・・。
これでプロの人たちは生活していけるのだろうか、と思ってしまう。
昨日もコンペに出すので写真を貸して欲しいという話があった。
ただし、コンペに通ればお金は出すが、通らなければ出せないと言われた。
「それはないでしょう」と思ったが、一流のプロもそういった条件をのんでいるとのこと。
以前は企画の段階で予算が出たが、最近は不況のために予算がおりないためらしい。
断ろうかと思ったが、良い感性を持った若いデザイナーが、僕の写真にほれ込んで選んでいったので、今回はその条件をのむことにした。
僕は医師として給料をもらっているので、写真の値段にうるさいことはいわなかったが、最近「それではいけない」と思うようになっていた。
欧米に比べると日本では写真の価値がひじょうに低いので、その価値を高めるためにも安売りすべきでない、と思うようになっていた。
あの素晴らしい写真を撮っていた星野道夫さんが生活に困窮して一時生活保護を受けることまで考えていたと聞くと、「やはりなんとかしなければ・・・・」と思ってしまうのだ。
が、これは不遜な態度なのかもしれない。
そんなことをしても、何も変わらないだろう。
余計なことを考えずに、自分の写真の質、表現の質をさらに高めることだけを考えるべきだ、ということに気付いた。