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戦場の天使

俳優の浜畑賢吉さんから本が送られてきた。

タイトルは「戦場の天使」。

明日死ぬやもしれぬ日本人兵士とヒョウとの心温まる交流の物語である。

浜畑さんは、舞台やテレビなどで活躍しているので知っている人も多いと思う。

その浜畑さんがなんでヒョウの物語なのか?

浜畑さんのもうひとつの顔として、サバンナクラブ(僕も所属している)の副会長やパンダ保護協会の評議員などがあり、その関係で野生動物を扱った朗読などをすることがよくあるそうだ。

「自然界の法則を見失ってしまった私たちには、動物から学ぶことがとても大切だ」と思っていて、親子で聞いてもらえる内容のものを探して朗読していたそうだが、あるときこの実話を聞き、調べていくうちに本になっていったらしい。

この話は、中国で戦っていた日本兵があるときヒョウの子どもを助けるところから始まる。

そして、彼らはヒョウを育て始めた。

孤高で人に慣れないヒョウだが、赤ちゃんの時から育てられたために人になつき、戦争という極限状態のなかで生きている兵士達のアイドルとなっていった。

このヒョウは大きくなっても兵士達と生活をともにし、彼らの心を癒し続けた。

しかし戦争の拡大ととともに、別れが訪れた。

野生に返しても生きていけないだろうと判断した兵士は、手をつくして上野動物園に引き取ってもらう。

そこでも人気者になっていくヒョウだが、やがて日本の敗戦が近づき、毒殺されてしまう。

そして、剥製になってこの兵士のもとに戻っていった。

悲しんだ兵士は、剥製なったヒョウを死ぬまで大事にし続けた。

まるで戦友であり、自分の子どもでもあるかのに・・・・。

動物に癒される人は多い。

ペット療法や動物介在療法なども知られている。

それは動物が単に可愛いからだけではない。

飾らない動物たちといる時には、人間がいろいろと余計な神経を使わずに、本当の自分に戻っているからなのだろう。

素の自分になり、やさしい自分になっていること自体が、自分自身を癒していく。

読み終わって、苦難をともにした「いのち」(たとえそれが人間でなくても)を尊ぶ姿は美しいと思った。

だが、「このヒョウが生きて、誰かのためになったのだからそれだけで存在した意味があったじゃないか」という思いだけではなかった。

同時に「孤高のヒョウがこのように生きていくのは悲しい」という思いがぬぐえなかったのも事実である。

野生動物は人間のものではない、という思いがあるし、あくまでも野生の中で輝いて生き、死んで欲しいと思うからである。

重要なのは、「いのち」を助けること以前に、「彼らが野生のかなで尊厳を持って生きていける環境をわれわれが犯さないこと」なのだと思っている。

しかし、どうしてもそれが難しい時、「死ぬのが可愛そう」と助けるのが良いのか、それとも放置すべきなのかは難しい問題だ。

ただ、かわいそうというセンチメンタリズムだけで判断すべきではないように思う。