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出発前はいつもストレスいっぱい

僕が専門の一つにしている大腸内視鏡検査と内視鏡的ポリープ切除術は、リスクを伴う。

稀だが腸穿孔(全国平均で3000分の1)をおこすことがあり、そうなれば開腹手術が必要になる。

ポリープ切除術は1~2%の確率で出血する。

出血すると入院が長引き、出血がとまらなければ手術が必要になることも稀にある。

今の病院に来て、大腸内視鏡検査だけで5000件以上、ポリープ切除も1000件以上やってきた。

この症例数は一つの大学病院の2年分くらいに相当する。

それ以前も大学病院で同数くらいの症例を経験している。

これだけ経験していても、この合併症をゼロにすることは出来ない。

というか、ゼロに出来る人はいないのである。

これはいくら注意していても、万全をつくしていてもおきる。

だからアフリカ出発前2週間はナーバスになる。

事故が起きた場合、一人なら中止すれば良いのだが、ツアーをやっている関係上、行かないではすまされない。

たしかに、行けば楽しい部分もあるが、行く前後の仕事などのストレス、行っている最中の現地でのトラブルなど、いつも「なんでだろう」と思うくらいストレスが多い。

毎年「こんなにたいへんな思いをして行き続けるのだろうか」と自問していた。

だが、答えは明白である。

ストレスも多いが、それ以上に喜びが大きいからだ。

前に進むことはストレスを生む。

前に進まなければストレスは少ないが、喜びも少ない。

「いったいどちらの人生を選ぶか」と問われたら、僕は前に進む人生を選びたいと思っている。

そういう前向きの自分のなかには、必要以上にナーバスになりすぎている自分がいるのも事実である。

この相反するように見える部分があきらかに共存している。

それもどちらも強いかたちで・・・・・。

しかし、最近は「なるようにしかならない」と運命を受け入れられるようになってきたため、だいぶ自分にストレスをかけることが少なくなってきた。

だが、多少は心配になる。

出発まであと1日。

無事に出発できれば良いのだが・・・・・・。

横浜市内のある小学校から、出張授業を頼まれた。

1~2年生が対象と聞き、「難しいです」とお答えした。

1~2年生は僕にとっては宇宙人。

どこまで分かるかまったく想像できないからだ。

ふだん小学校で出張授業を頼まれるときは、5~6年を対象に自然界のバランスをするが、それは難しすぎるだろう。

しかし、担任の先生の熱意に動かされ、受けることになった。

テーマは動物親子と群れの話。

チーター、ライオン、ヌー、ゾウの親子のエピソードや群れでの生活をスライドで紹介しながら30分の授業をおこなったが、2年生はテレビの影響なのか、動物好きの先生が普段教えているのか、その知識にびっくりした。

ほとんどの質問に答えるではないか・・・・。

みな熱心に聞いてくれたので、多少は役だったのではないか、と思っている。

終了後、1年生のエスコートで教室に行き、子どもたちが全員で僕のために劇を演じてくれた。

素晴らしい出来にちょと感動。

でも、さらに感動したのは先生の熱意だった。

実はこの学校は廃校になるらしい。

その記念に子どもたちのために何かをしたいという先生の熱い思いに胸が熱くなった。

12月には校庭に移動動物園を呼ぶらしい。