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サファリ日記2003年8月 ツアー編6

8月28日

サファリをするのは今日が最後。

朝食に戻る組とフルデイ(日の出から日没までサファリ)組に分けて出発。

フルデイ組は、僕とリピーターの2人だけだ。

まずは日の出。

昨日良かったので期待したが、今日はイマイチだった。

今日はチーターと三頭の大きな子供をまず捜すつもり。

すぐにチーター親子に出会うことが出来た。

子どもたちは、周囲を取り囲む車の周りで遊ぶこと遊ぶこと。

走り回ったり、ランドクルザーのボンネットなどにのっかったりで、みな大喜びだった。

この遊びは延々と続いた。

もう少し待てば狩りをするかもしれないが、朝食組は戻る時間になってしまった。

多くがロッジに戻ったので、一人が僕の車に同乗し、もう一人は一台を独占することになった。

狩りをするためにチーターが移動を開始したので、2台で追跡開始。

途中親子は水を飲み始めたが、岩場で顔が見えず、水のみシーンは撮れなかった。

しばらく行くと、トムソンガゼルの子どもが見えた。

生まれた直後で、まだよろよろしている。

母ガゼルは、僕らが近づいたので離れてこちらの様子をうかがっている。

子どもは、捕食者に見つからないようにと草の中に這いつくばり岩に化けている。

僕らがいると母親が近づけないので、しばらく離れて観察していることにした。

そこにチーターが現れた。

子どもを見つければアッという間に捕まえてしまうだろう。

今この地域では、野焼き後の新芽を食べるためにたくさんのガゼルが集まっている。

そして初めて経験する出産ラッシュ。

生まれて間もない子どもがたくさんいる。

この子どもはチーターの絶好の獲物なのだ。

足の遅い子どもは見つかったらもう最後。

本能的に知っているこの子はじっと身を潜めていた。

チーターからは、この子が立ち上がらない限り、見えないだろう。

しかし、母親が戻ってこなければこの子はお乳も飲めずに、衰弱してしまう。

母ガゼルは、チーターが行ってしまうのを見届けてから子どもの所に戻ってくるだろうと思っていた。

1時間ほど待ったが、両者とも動く気配がないので、1台を残して僕の車は川にヌーをチェックしに行くことにした。

川に行ってみると、すでに対岸にはヌーの大群が終結していた。

あきらかにヌーたちの緊張が高まっている。

「これはきっと渡る」と思った。

案の定、15分ほどでヌーの大集団は渡り始めた。

それも半端な数じゃない。

ある場所では、岸に倒木があり、ヌーたちはいっせいにそれをジャンプして越えながら水に入っていく。

壮観なんてものじゃない。

怒涛の迫力だ。

僕が川渡りを初めて見たのは12年前。

その時見た渡りが最高で、以後それを超える渡りが見れていなかったが、今回はそれ以上だ。

しかし、もう一台の車が来ない。

チーターのところで粘っているらしい。

無線で「すぐに来るように」と言うが、ここまでは40分ほどかかる。

川渡りが終わってしまう・・・・・。

が、その時、もう一台はチーターのハンティングを見ていた。

母親が子どもの所に戻ってきたらしい。

しかし、チーターに見つかり捕まってしまった。

本能よりも母の愛が勝ったがための悲劇だった。

子どもはチーターに見つからなかったらしいが、母親がいないので当然生きていけない。

こういった時、チーターに狩りに成功して欲しいという気持とガゼルの子どもが助かって欲しいという感情がいつも交錯する。

しかし、これは自然に任せるしかないのだろう。

そうこうしているうちに川渡りは途切れた。

ドライバーに「どの位渡った?」と聞くと、「1万くらいだろう」という答え。

たしかに凄かった。

が、対岸にはまだまだヌーが溢れ、渡りそうである。

20分ほどして2回目の川渡りが始まった。

今度は1回目ほどではないが、数千は渡った。

もう一台はなんとか間に合ってこの川渡りが見れて良かった。

「これでやっとリピーターの人にも満足してもらえた」と心底ホッとしたのだった。

しかし大多数のメンバー(いずれも今回アフリカが初めて)はロッジにいる。

「早く来いよ」と祈っていた。

そして、その祈りは通じた。

というより、この日は2時くらいから始まった川渡りは、奇跡のように5時過ぎまで断続的に続いたのだった。

推定1万、数千、1万、数千、数千、数千、といった感じで6回は渡った。

おそらく3万頭以上は渡ったに違いない。

ツアーの残りのメンバーも最後には間に合い、最高の川渡りを堪能したのだった。

この時、今日一日で僕が撮ったフィルムは30本に達していた。

(今までで最高は21本)

が、ドラマはまだ終わらなかった。

暗くなってから1頭のライオンが忍び寄ってきた。

対岸からこちらまで泳ぎきり、いっせいに崖を駆け上がっていくヌーたち。

ヌーに少しずつ近寄っていくメスライオン。

「今やるか、今やるか」と手に汗握っていた。

ライオンの狩りは夜間が多く、明るいうちに見ることは難しい。

僕自身、ライオンが狩りに成功したのを見たのは、4回くらいしかない。

今度は結構近いし、ヌーの数が多いので見れるチャンスだ。

その時、川渡りで疲れ果てた様子の若いヌーが少しよろけながら走ってきた。

「あれをやる」と誰もが思った。

案の定、忍び寄ったライオンはヌーを追いかけ見事に仕留めた。

チーター親子から始まって、最高の川渡り、そしてライオンの狩りで締めくくられた今日のサファリ。

僕の500日以上のサファリのなかでベスト3に入る内容だった。

しかし、ツアーの初めは天候が悪く、ナクル湖、サンブルとサファリが不調で、「みんなに申し訳ない」という気持だった。

最後の最後でサバンナは期待に答え、帳尻を合わせてくれた。

一時はもう絶対にツアーはやめようと思っていたが、今日のサファリであと2回だけツアーを続けてみようか、という気になった。

今日撮ったフィルムは32本。

最高記録だった。