朝6時15分に朝食。
朝食後、ツアーの皆はナイロビに向けて出発する。
僕と家内は、このロッジにあと4泊する予定だ。
見送ってから、7時15分にサファリに出発。
今日は久々の晴天で、気分も乗ってくる。
まずはチーターの親子を探すが、見つけたときは3頭の親子の狩りは終わっていた。
今回は狩りのシーンが撮影目的のひとつだったが、どうも狩りに関してはタイミングをはずしている。
チーターが食べている最中にハゲワシが集まってきた。
それをどこかで見ていたのだろう。
突然、ハイエナの集団が押し寄せてきた。
10頭近くのハイエナがチーターの獲物をさらい、そしてどこまでもチーターを追っていく。
本気ではないが、あまりにしつこく追うので、チーター親子ははるか遠くに逃げてしまった。
このまま追ってみてもチーターは食べたばかりなので、木陰で休むだけだろう。
そこで新たなターゲットを探してサファリを続けた。
この時期、ここではチーターか川渡りのどちらかぐらいしか狙える動物がいない。
そして、今の状況ではどちらも良いシーンは期待できないだろうと判断したので、思い切って今子どもが多いトムソンガゼルを撮ろうと思った。
生まれて数日もすると子どもはカメラを向けただけですぐに逃げてしまうので、生まれたばかりの子どもを捜すことにした。
幸いにも先ほど生まれたばかりという子どもを発見。
子どもは岩のように地面に伏せ、母親は少し離れた所で草を食べていた。
粘って親子が寄るのを待っていた。
しかし、ドライバーは「あの母親は若くて警戒心が強いのでなかなか寄ってこないし、撮影は難しいだろう」と言う。
「本当かよ」と一瞬思ったが、彼は「向こうに子どもを生みそうなメスがいる」と言うではないか・・・・・。
「えっ!」とあたりを見回すが、それらしきガゼルは遠くで座っているガゼル1頭のみ。
だが、近づいてみて驚いた。
たしかに生まれそうだ。
それにしてもあんなに離れているのに見えるなんて、「彼の視力はいったいいくつなんだろうか」とあらためて驚いたのだった。
近づきすぎると警戒させてしまうので、少し離れたところから600mmの超望遠レンズで観察していた。
母親は立ったり座ったりしているが、それほどいきんでいる感じはしなかった。
だが、突然液が漏れ出してきた。
破水が始まったのだ。
母親は土にしみこんだ羊水をさかんに舐めている。
「喉が渇いているのか」と思ったが、ドライバーは「捕食者が寄ってくるといけないので羊水の匂いを消しているのだ」という。
やがて頭と足が出てきた。
それから20分ほどで、わりとあっけなく出産した。
母親は子どもをしきりに舐め、子どもを覆っている膜を食べ始めた。
これも匂いを消すためらしい。
本能的に知ってやっていることだろうが、その意味を知ると「すごい」とうなってしまった。
子どもの濡れた黒い体が逆光にピカピカ光り、それを慈しむように舐める母親。
なんて幻想的で美しいシーンなのだろうか。
母親の顔がやさしく、子どもの顔もとろけそうだ。
ガゼルの出産は何度も撮っているが、今回はダントツに美しいシーンが撮れたように思う。
やがて、子どもはよろよろと立ち始めたが、まだ脚の力が弱く、すぐによろけて倒れてしまう。
だが、何度も繰り返しているうちに力がついてきた。
そして立ち上がって母親のおっぱいを探し始めた。
母親はさかんに子どもの臍帯付近を舐め、へその緒を食べてしまった。
これもすべて捕食者を寄せる匂いを消す作業らしい。
日中の強い日差しで子どもの身体はだんだん乾いてきた。
立ち上がる回数が増え、おっぱいも飲めるようになった。
歩く距離も増し、母親といっしょに歩けるようになってきた。
さあ、群れに戻る時間が近づいてきた。
撮影はもう十分。
満足して僕たちもロッジに向かった。
昼のサファリは午後は3時30分から。
まずは川をチェック。
4カ所でヌーの小群が集結していたが、すぐに渡る気配はなかった。
この4か所を移動しながら状況をチェックした時にヌーの大群が列をなして走ってくるのが見えた。
そちらに向かおうとした時に1頭のメスライオンがヌーに忍び寄るのを発見した。
スルスルと近付き、群れが疾走して来る20mほどに寄っきてた。
「さあ、狩だ」と思ったが、ヌーは気付いてしまった。
10m手前でピタッと止まってしまい、移動の位置を変えてしまった。
その後ライオンは再び群れに近寄ろうとしたが、ヌーの群れは大きくルートを変えてしまったために、狩りは成功しなかった。
そうこうしているうちに突然砂煙があがってきた。
川渡りが始まったようだ。
場所は昨日と同じだ。
急いで寄ったが、昨日があまりにも凄すぎたので、今日の渡りはあきらかに迫力がない。
ほとんど撮る気にもならなかった。
1回目の渡りが終わり、2回目も待てばすぐに渡りそうだったが、今日は日没が良さそうだったので、チーターと日没を狙うことにして、そこを後にした。
が、チーターは見つからず、太陽の光も強くてイマイチだった。
ゾウ4頭と日没を撮ったが、今日の光ではだめだろう。