9月1日
明け方夢をみた。
アフリカではよく夢を見るのだが、今日の夢は鮮明だった。
それは、チーターの母親が子どもをくわえて運ぶシーンを大西さんが撮れて、僕が嬉しくて涙を流している夢だった。
正夢になるだろうか?
期待しながら、朝6時に出発。
曇りで日の出はだめだった。
チーター親子の場所に行ってみると、親子はあいかわらず同じ場所にいた。
子供のうち1頭の動きが昨日からにぶく、弱っているのかもしれない。
ドライバーの一人は「死んでしまった」と言うが、そうではなさそうだ。
それにしても、7時頃から風が強くなってきて、着込んでいてもふるえるほど寒い。
8時頃になってやっと明るくなってきた。
母親は周囲を気にしだした。
この様子から今日移動するかもしれないと、期待に胸が膨らむ。
僕の車を含めて5~6台が離れて、チーターが子どもを運ぶところを待っている。
僕、大西さん、阿部さん、ケニア在住のインド人写真家・シャー(マサイマラに行くと良く出会う)はずっと待っているのだが、他の車はやって来てはしばらく待って行ってしまう。
離れたところで待機しているので、母親が起き上がらないと草に隠され見えない。
しばらくは母親の姿はみえなかったが、10時頃に母親が動き始めた。
50mほど離れた次の棲家の予定地に行き、入念に調べた後、その場所に寝転び、草を倒し、隠れ場所を作っているようだ。
が、その後、もとの隠れ場所と反対の場所に歩いていってしまった。「どうしたのだろうか」と思ったが、安全に運べるようにと周辺も探索していたようである。
そして母親が戻ってきた。
いよいよ引っ越しが始まるかと思うとドキドキしてくる。
1頭ずつ子供を口にくわえて運んでいくことは分かっていたが、勝手が分からずどこで待っていたら良いのだろうか?
確実に5回は運ぶので、焦ることはないと思っても、めったにないチャンス(はじめて経験する)だから緊張する。
はじめ、次の棲家の途中のところで待っていたが、ここでは正面から撮れないことが分かった。
そこで次は新しい棲家の前で待ち、向こうから来るところを正面からとらえようとした。
しかし、草が高すぎる!
子どもに草がかかってしまうし、ピントも合いにくい。
これでは話にならない。
3度目ははじめの棲家のそばに移動した。
ここだけ草が低いからだ。
しかし、ポジショニングが不十分だったので、4度目に調整して万全の体制をとった。
そして移動が始まった。
子どもをくわえた母親が棲家を出てこちらに向かってくる。
ファインダーの中がチーターの顔で占められていく。
真正面だ!
母親も子どももバッチリ見える。
連写、連写で1回の移動で1本撮りきってしまう。
5度目もその位置で確実に撮れた。
そして移動は終わった。
大西さんも僕の横で撮影していたので間違いなく撮れただろう。
僕も嬉しかったが、それ以上に大西さんが撮れたのが嬉しかった。
なんといっても、このシーンを撮るのが大西さんの夢だったからだ。
お互いに固い握手を交わしながら、2人とも目が潤んでいた。
阿部さんも2人が撮れたことを自分のことのように喜んでくれ、ビデオに撮ってくれた。
目的を達したので、大西さんと別れ、阿部さんとセレナに戻ることにした。
セレナに戻る途中でキリンの群れが水を飲むシーンを撮影。
ロッジに戻ったのは2時半だった。
午後は3時45分からサファリの予定地だったが、お腹の調子が悪く、スタートを4時半に遅らせた。
疲れてくるとお腹の調子が悪くなってくるのだ。
休めば良いのだが、よほどのことがない限り休もうなんて思わない。
なるべく長くサバンナにいることが大切だと思っているからだ。
出発は遅れたが、ロッジを出てすぐに3頭の子づれのチーターを発見することが出来た。
それも、すぐに狩りをしそうな雰囲気。
空は雲に覆われていたが、一部の空から光が漏れ、良い感じだった。
その時、2頭のチーターが蟻塚に登った。
空を入れて、シルエットで撮る。
おもしろい写真になったかもしれない。
5時すぎに、ガゼルの子供を発見した母親は一気に走って捕まえた。
相手が生まれて間もない子どもだと走力の差は圧倒的。
あっけないほどすぐに捕まえてしまう。
後を追ってきた子供たちが、その後捕まえては放しまた捕まえる、という狩りの練習に入った。
数回練習したところで、母親がとどめをさした。
日没は雲が多くだめだった。
天候あきらかに悪化しつつある。
情報によると、今朝チーターの家族の引っ越しを撮ったあたりは大雨になったとのこと。
なんとついていたのだろうか(以後、しばらくは誰もこの家族を見なかったようだ)。
明日からしばらくは天気が悪くなりそうだ。