朝食後すぐに奈良にある学園前に向かう。
「たんぽぽの家」http://popo.or.jp/
で講演すためである。
以前も書いたが、写真集Love Letter出版のきっかけを作ってくれた鳥海さん(福祉関係の仕事をしている)紹介で今日の講演が決まった。
「たんぽぽの家」は、障害をもつ人たちの自立援助サービスセンターをつくるために設立され、現在は、障害をもつ人たちが芸術活動などの創造的活動を通して自己を表現し、社会自立をめざすために、国内はもとより海外へネットワークを広げ活動を展開している。
ここのスタッフの方を中心に「医師と自然写真家、2つの視点でいのちを考える」というテーマで話をした。
少人数ながら感性豊かで問題意識を持つ人たちが集まった。
狭い部屋で画面が近く、また良いプロジェクターで画質がすばらしかったということもあるだろう、最初から会場が良い「場」になっていくのを実感しつつ、僕自身は気持よく話をすることが出来た。
スライドが始まり、いきなり泣き出した人がいた。
ほかにも涙ぐんでいる人が何人もいた。
話が終わって、皆が自己紹介をしながら、感想を述べことになった。
いきなり泣き出した方は、1週間前に友人の母親の死を経験していた。
その悲しみをうまく受け止めきれずにモヤモヤしていたらしい。
が、僕の話を聞いているうちに、封印していた悲しみがドット押し寄せてきたらしい。
そして死の意味を理解してくれたようである。
ただ一人障害のある方が参加していた。
今回の主催者である「たんぽぽの家」の森口さんが何も言わずに参加するように言ったらしい。
この方の感想も嬉しかった。
障害のために言葉不自由なため、僕にはその方の言っていることが理解できなかったが、となりにいた介護の方が通訳してくださった。
それは「今日は何もわからずに来たけれど話を聞けてとてもよかった。自分は近々手術をしなければならないがそれが怖くてたまらなかったが、今日の話を聞いて手術を受けてみようという気になった」という感想だった。
この言葉に何人もが涙を流していた。
この方はかなりの障害を持っているようだが、いつも笑顔でいる。
「仏に近い人なのだろう」と思った。
若い男性スタッフも何人か参加してくれた。
最近にはめずらしい純粋で感性豊かな青年たちで、こういう場にはすばらしい人たちが集まるのだと思った。
それにしても、みなが長い長い感想を述べてくれた。
しかし、僕の講演に関する感想は少なく、むしろ自分自身のことを話す人がほとんどだった。
「どうしてだろう」と思っていたが、帰りの電車で、鳥海さんが教えてくれた(彼女はいつも僕の気付いていないことを教えてくれる)。
僕の話は、みなに中からいろいろなものを引き出したようである。
封印していた想いや感情などを、である。
「それって単純に感想を述べさせるよりずっとすごいことなんだ」と分かったとき、たまらなく嬉しくなってきた。
今日このような機会を与えてくれた鳥海さんや森口さんに感謝・感謝。