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呪縛

先日、クリニックの近くで食事をしていたら患者さんに話しかけられた。

80過ぎの男性だったが、以前うちで大腸内視鏡検査を受けた際、僕から「年齢的にこの検査はもう受けなくてよい」と言われショックを受けたという。

初めは「見放されたのか」と思ったらしい。

しかし、1~2週間考えているうちに、自分が「毎年大腸検査を受けなければならない」という呪縛にとらわれていたことに気付き、それから解放されるのか、と清々しい気持ちになったという。

大腸の検査は多少のリスクを伴う。

小さなポリープができたって、それが死因にはつながらない。

今まで何度かポリープをとって腸内に残っていないのであれば、80歳を過ぎての定期的経過観察は不要だと思う。

5年以内に大腸進行癌になるリスクが極めて低いので、高齢の方やリスクの高い方には、「もうリスクのある検査は終了で、なにか特別な症状が出たらその時にやるのでよいのでは?」と話している。

この考えは間違っていないはずだが、この話をしてくれた方ほどの理解を示してくる場合ばかりではないはずだ。

いやこれだけインテリジェンスのある方だったから、自分が呪縛にとらわれていたことが分かってくれたのだ。

改めて言い方は難しい、と感じた。

 

今の時代、生きることが当たり前になりすぎているように思う。

実は、人間にとって必然なのは、生きていられることではなく、死ぬことなのだ。

生きていられることは奇跡に近い幸せなことだと思っている。

死ぬまで、生きていられる幸せをかみしめ、精一杯生きることが大切なのだ。

多くの人がそのことを忘れている。

横浜市内のある小学校から、出張授業を頼まれた。

1~2年生が対象と聞き、「難しいです」とお答えした。

1~2年生は僕にとっては宇宙人。

どこまで分かるかまったく想像できないからだ。

ふだん小学校で出張授業を頼まれるときは、5~6年を対象に自然界のバランスをするが、それは難しすぎるだろう。

しかし、担任の先生の熱意に動かされ、受けることになった。

テーマは動物親子と群れの話。

チーター、ライオン、ヌー、ゾウの親子のエピソードや群れでの生活をスライドで紹介しながら30分の授業をおこなったが、2年生はテレビの影響なのか、動物好きの先生が普段教えているのか、その知識にびっくりした。

ほとんどの質問に答えるではないか・・・・。

みな熱心に聞いてくれたので、多少は役だったのではないか、と思っている。

終了後、1年生のエスコートで教室に行き、子どもたちが全員で僕のために劇を演じてくれた。

素晴らしい出来にちょと感動。

でも、さらに感動したのは先生の熱意だった。

実はこの学校は廃校になるらしい。

その記念に子どもたちのために何かをしたいという先生の熱い思いに胸が熱くなった。

12月には校庭に移動動物園を呼ぶらしい。