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呪縛

先日、クリニックの近くで食事をしていたら患者さんに話しかけられた。

80過ぎの男性だったが、以前うちで大腸内視鏡検査を受けた際、僕から「年齢的にこの検査はもう受けなくてよい」と言われショックを受けたという。

初めは「見放されたのか」と思ったらしい。

しかし、1~2週間考えているうちに、自分が「毎年大腸検査を受けなければならない」という呪縛にとらわれていたことに気付き、それから解放されるのか、と清々しい気持ちになったという。

大腸の検査は多少のリスクを伴う。

小さなポリープができたって、それが死因にはつながらない。

今まで何度かポリープをとって腸内に残っていないのであれば、80歳を過ぎての定期的経過観察は不要だと思う。

5年以内に大腸進行癌になるリスクが極めて低いので、高齢の方やリスクの高い方には、「もうリスクのある検査は終了で、なにか特別な症状が出たらその時にやるのでよいのでは?」と話している。

この考えは間違っていないはずだが、この話をしてくれた方ほどの理解を示してくる場合ばかりではないはずだ。

いやこれだけインテリジェンスのある方だったから、自分が呪縛にとらわれていたことが分かってくれたのだ。

改めて言い方は難しい、と感じた。

 

今の時代、生きることが当たり前になりすぎているように思う。

実は、人間にとって必然なのは、生きていられることではなく、死ぬことなのだ。

生きていられることは奇跡に近い幸せなことだと思っている。

死ぬまで、生きていられる幸せをかみしめ、精一杯生きることが大切なのだ。

多くの人がそのことを忘れている。