土曜日の混雑した外来途中、看護師からの「すぐ来てください」の声が聞こえた。
尋常ではないその響きに外来を飛び出した瞬間に目に入ったのは、倒れている患者さんの姿。
すぐに呼吸していないのが分かった。
脈も触れない。
心肺停止だ!
その中年の患者さんはたいした基礎疾患がなく、今回は発熱で受診。
インフルエンザの結果がでるまで、隔離のためバックヤードで待機していた矢先のことだった。
たまたま前を通った師長が呼吸状態がおかしいのに気づき、僕を呼んだのだ。
原因は分からないが、救急処置開始。
看護師たちは昨日救急の勉強会に出席し、今朝その手順を話し合っていたこともあり、対応は早い。
心臓マッサージが効いて、すぐに呼吸再開。
AEDが反応して、2度のカウンターショック後には心拍も戻り、血圧も上昇した。
救急車を呼び、労災病院に搬送した。
処置が早くて大丈夫だと思っていたが、本日家人が来院し、「話ができるぐらいに回復しました」と教えてくれた。
結局、原因は突然死の原因となるブルガータ症候群らしい。
突然の不整脈で心停止がおきたようだ。
今までドックでも心電図の異常は指摘されておらず、事前の診断は困難とのこと。
それにしてもいくつもの偶然が重なってこの方は助かった。
まず院内で心停止がおきたこと。
偶然看護師が呼吸状態がおかしいことを発見したこと(この時は心室細動で心臓停止と同じ状態だったはず)。
すぐに僕も看護師も対応できたこと(発見が数分遅ければ助からなかったか、脳に重大な障害を残しただろう)
院内にAEDを設置していたこと(おいていないクリニックのほうが多い)。
これらの偶然が重なって、助かったのだ。
まさに奇跡の生還だと思う。
開業して以来、AEDを使ったのは初めて。
というかこんなことは初めてだった。
搬送のために、待っていた外来の患者さんには迷惑をかけたが、ほとんどの方が午後もしくは翌週に再受診してくださり、「たいへんでしたね」とねぎらってくださった。
ご迷惑をおかけしました。