瀬尾拓慶写真展『Unison』 | FUYUHIKO INOUE Breeze in Savanna

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日吉で行われている瀬尾君の写真展『Unison』を観にいった。 彼の写真はデビューの時からずっと観ている。 一緒にアフリカにも行ったし、僕の30周年記念の写真展のプロデュースやDM作りもお願いした仲である。 写真家としてすっかり有名になってしまったが、今回の写真も相変わらず地味な作品ばかりだった。 1点1点はなぜこの作品を出してくるのだろうと思ってしまう。 だが、それが一つの空間に収まると、不思議な世界観が立ち現われてくるから不思議だ。 写真の実力はすごい。 ただし写真が地味なので、同じ場所に立って撮影し、お互いの写真を比べてみなければ彼の実力はわからないかもしれない。 アフリカで同じ車に乗って撮影し、お互いの写真を見せ合った時に、なぜこんなに上手いのだろうと心底驚いたことを思い出す。 視点と表現力が違うのだ。 彼の作品の中に、自分とは真逆にあるものをいくつも見つけ、とても刺激になった。 同じ淡い光を見ているのはが分かった。 光に対する感性が違うとは思わなかった。 ただ、僕が表現していたのは、その淡い光ではなく、もっと強烈な光だった。 なぜ僕がその淡い光を拾おうとしなかったのか。 それは当時の僕には表現できなかったからだ(最近は彼の影響で大分できるようになってきた)。 彼は、美しいと感じた淡い光を瞬時に計算し、その場でカメラ設定を細かく変えながら忠実に表現できる稀有な才能を持っている(後で現像で変えたりしないのだ)。 カメラに撮らされている(だからダメというわけはないのだが)私を含め多くの写真家には到底及びもつかない撮影手法をとっているのだ。 そんな人を見たことがなかった。 写真以外に即興で作曲し、歌い、すぐれた空間デザイン能力もある。 ここまでの才能に恵まれた人はそうはいないであろう。 おまけに性格まで良い。 ただ、老婆心ながら思うこともある。 多くの自然写真家は自然の中で時間をかけて一瞬の光を追い求めている。 そのギラギラした執念が彼には希薄なのだ。 それが彼の良さなのかもしれないが・・・・・。